何をもってゴールとするかはスケーターにとって様々ですが、スポンサーを付けたり一定の評価を得たい、というのであれば避けて通れないものがあります。
それが「フルパート」というものです。
日本ではフルパートを持ったことがないスポンサーライダーが数多く存在しますが、通常そのようなことは認められるべきではないと考えます。
まぁショーンマルトやアントワンディクソンなどは、フルパートを残す前からほとんどプロのような扱いを受けていましたが、それは私がいつも言う「例外」ということになります。
このような例外の人達はフルパートをドロップするより先にサポートしてもブランド側が「必ず世間を驚かせるパートが作れる」という確信があるから良いわけです。
通常はフルパートを作り上げ、それを名刺代わりにサポートが決定するというのが慣例です。そりゃそうです。あなた誰?でブランドの売上に貢献できる人間はいませんからね。
ではそのフルパートを作り上げるのに一番大切なこととは一体なんでしょうか?
一番重要なのは気迫
「気迫」というとちょっと曖昧な表現になりますが、根気、と言ってもいいかもしれません。
フルパートを残すという事はある程度のトリック数やメイク率が必要になることは言うまでもありません。キックフリップしかできない人がフルパートを残すのは無理がありますからね。良いパートを作ろうと思えばスキルも必要となるでしょう。
しかし、一番大切なことは「気迫」や「根気」です。
それはなぜかというと、フルパートというものはいくつかの暗黙のルールがあるからです。「世界一自由なはずのスケボーにルール!?」という感じですよね。
そこがスケーターの不思議なところで、いつもスケーターは自分に厳しいマイルールを課すという不思議なクセがあるのです。
ストリートではなくてはならない
まずフルパートはストリートでなくてはいけません。
どうしてか?それはフルパートというものがそういうものだからです。パークで撮った映像はフルパートではありません。これに異論がある方はフルパートは出せないということになります。説明になっていませんがこれは変えることができません(笑)
ストリートは、セキュリティがいます、普通の一般人もいます。チャリも通ります。雨も降ります。
そうです、いくらそのライダーにスキルがあってもその日によってはトライすらできないこともあるわけです。これは運によることも多く、トライすることが出来る日まで何度でも通うという「根気」が必要となります。
100キロ離れた他県のスポットにわざわざ行ったのにセキュリティでできない、なんてことはスケーターにとっては日常茶飯事です。それでもセキュリティが緩そうな日や時間帯を狙って何度でも通って2,3秒の画を撮りに行く、まさに「根気」です。
同じトリックは使えない
いくらトレフリップが得意でどんなスポットでできるとしても、フルパートに使えるのは2回か3回までです。それ以外は全て違うトリックで構成なくてはいけません。
厳密に言えばラインでやるトレとステアでやるトレは同カウントしなくて良い、などのルールはありますが、大まかに言えば同じトリックは2、3回が限度ということになります。
つまり、苦手なトリックでもある程度画になるストリートスポットにおいてメイクしなくてはいけないわけです。パークでもメイク率が低いトリックならストリートではなおさらメイクは難しいですからね。
「何度クラッシュしてもメイクにたどり着くまで100回でもやる」ここではまさに「気迫」がモノ言います。
そして苦手なトリックでも、いかにも”いつでもメイクしています”というカッコ良さやスムーズさも必要です。
とことんフルパートは難しいですね。
同じスポットは使えない
あまりないですが、たまに完璧なストリートスポットという場所が存在します。
セキュリティもいない、スケボー禁止の看板もない、通行人もおらず、プッシュの長さ、路面、着地、全てがパークのようなスポット。
本来ならここで出来るトリックは10個でも20個でも撮っておきたいでしょう。しかしそれは許されません。
これもせいぜい2つか3つ、ということになります。
同じカーブの画がずーっと流れているのは見ている方もつまらなくなりますからね。ですからフルパートはただでさえ見つけるのが難しいストリートスポットを何十カ所も開拓し、何百キロも移動し、ワントリック数秒の画を積重ねることが必要になります。
まさに気迫と根気ですね。
まとめ
フルパートを作るには上記の他に、スキルや気持ちを上げてくれる仲間、完璧に撮ってくれるカメラマン、パートに仕上げる編集スキル等、必要な要素がまだまだ盛りだくさんです。
カッコ良く仕上げようと思えば思う程、気の遠くなるような作業を気迫によってこなす必要があります。
これらを全て乗り越えて作り上げられた数々のフルパート。わずか2,3秒のワントリックにもこのような裏の努力があるんだなぁと思って見てみると、また違った画に映るかもしれません。
ちなみに私はいつもそのように見て勝手に楽しませてもらっています。単純にスキルやスタイルだけを見るのではなく、このような楽しみ方もフルパートにはあるのです。
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