スケーターなら誰しもが一度は夢見るであろう【フルパート】
その役割や意味合いも時代の流れとともに変化してきました。
昔はフルパートを無料で見るなんてことは出来ず、お金を払ってビデオテープを購入して、その同じビデオを擦り切れるまで見る、と言うのが当たり前でした。
今では同じビデオを何回も見るなんてことはあまりないと思います。それは日々webには新しい動画がでるので、毎日新しい刺激が手元のスマホから得られるからです。今の若手にとっては本当に良い時代ですよね。
僕ら古いスケーターも確実にその恩恵を授かっているのですが、その当時、一つのビデオテープをバイトしたお金で購入して擦り切れるまで見た、というのは何か「古き良き時代のスケーター」という感じがして嫌いじゃないんですよね。
今の時代が悪い、昔の方が良い、という話ではないですよ。確実に今の方がスケーターにとっては良いことですから(笑)
ワントリックのフッテージは人生そのもの
いきなり大げさに書きましたが、ワントリックの映像というのはスケーターにとってはそれくらい価値のあるものという意味です。
今までの練習の苦労や、イメトレ、トリックやギアの調子、セキュリティの緩い時間、カメラマン、そのすべてがピタリと一致した時にメイクができます。
そのメイクはもはや最高と言う言葉では片づけることはできず、今までの人生の嫌なことを全て帳消しにしてくれるほどの高揚感に包まれます。
この感覚は凡人であれ、天才であれ、同じであると思います。そのスケボーの高揚感が、時に怖いほどのスケボーへのハマり具合を作り出しているわけです。
これがフルパートのモノによってはわずか1、2秒ほどで流れていく【ワントリックの重み】です。
これの積み重ねにより、2分3分のフルパートが完成されていくわけですね。
職人肌のスケーター
前から思っていたことがあるのですが、スケーターには良い意味での大きな適当さがある一方、このように1秒の映像の為に必死に全てを整えてくる緻密さがあり、それはまるでモノづくりの職人に近いものがあります。
誰も見ていないような細部にもこだわり、誰も見ていない部分の仕上げに長時間を費やすわけですからね。スケーターはモノづくり職人です。
しかもスケーターにはその1、2秒の重みを特に説明する機会があるわけでもありません。
あの時は近所のおばちゃんに注意されたけど何とかあと1回トライさせてもらって~やら、デッキが折れたけど急遽友達の板借りて~やら、実はあれはトライ3日目で~やら。
これらを全て端折って流れていく1秒のメイク。気が遠くなる作業ですね。
スケーターのカッコ良いところ
僕はスケーターが大好きなんですけど、スケーターの何が良いかって、このような苦労をイチイチ話さないところなんですよね。これはトリックに限らずの話です。
最近ではコーチのような人がスケボー界隈にもいますけど、自分が目を付けていた子や初心者の頃教えてあげた子が、ちょっと台頭を表したからと自らの手柄のように言うのはやっぱりどこかスケーターっぽくないと思ってしまうのは僕だけでしょうか。
それは親にも言えることで、子供が注目されたからって親が出てきて良いことなんて一つもないと思います。親は黙って必要なお金を出してあげるだけの方がスケーターっぽいです。
以前ツイッターでtight boothの上野伸平さんが、茨城のスケボーの代理店であるアドバンスマーケティングの田中憲治さんからLENZのDVDプレス費用としてなんと100万円借してもらったということをおっしゃっていました。そして「このことは忘れない」とも。
これも上野さんが発信しなければ世に知られなかった事実ですよね。めちゃくちゃカッコイイです。ザ、スケーターです。
まとめ
少し話がそれましたが、フルパートにおける1秒とか2秒で流れていく【ワントリック】と言うものはこのように色んなものが詰まった上で成り立っています。
これを「こんなに苦労してるんだ!」と自ら言うのではなく、何も言わずにパートをドロップし、お金にもならず、何も言わずに消えていくスケーターはつくづく名もなき戦士であり、大バカ野郎ですね。
そんなスケーターが僕は大好きです。
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