日本国内におけるフルパートというものについて、以前から疑問に感じていたことがあります。
それは実際にはとても上手くてとんでもないスキルと思っていたスケーターがフルパートを出すと「あれ?この人はもっと上手くなかったっけ?」と感じてしまうことがあるということ。
フルパートというものはコンテストと違い、トリックメイクするまで何度でもトライできますし、場合によっては苦手なトリックをまるで得意トリックのように見せることも可能なわけですよね。
一見スキル以上のものが出来るのが普通であると考えることもできますが、国内のフルパートにおいては意外と「あれ?」ということが少なくありません。
これはなぜでしょうか。
実は持ち技が多くなかった
スケーターを「上手い」と感じる感覚として、衝撃的なシーンを見たことによる「インパクト」というものがあります。
例えばステアを一発でメイクしたときなんかがそうですね。フロントフリップが得意なスケーターが一発でステアをやっつけた時、その「一発」という衝撃が強烈に見ている側の脳裏に残り、他のトリックを見ていないのに「あのスケーターはスケボーの全てが上手い」と思ってしまうことです。
まぁ得意トリックと言えどステアを一発でメイクしてしまうというのは十分上手いと言えるのですが、フルパートには色んなトリックを用いる必要があるので、得意トリックの一点張りではフルパートとして成り立ちません。
そしてそのスケーターが実際にパートを出した時、「あれ?もっと上手くなかったっけ?」となるわけです。
どんなに得意なトリックがあり、例えそれのみが世界一上手くても、それだけで「フルパートで魅せる」ことは不可能なのです。フルパートって本当に大変なんですよね。
フィルマー・編集者の腕
これもかなり重要です。
ここではフィルマー兼映像編集者としますが、実はフィルマーは優秀であるほど、「撮りたくないトリック」というものを持っています。
撮りたくないトリックとは、分かりやすいところでは「以前やったトリック」ですね。
フロントフリップが得意だからと言って、どこのスポットに連れて行ってもフロントフリップばっかりやられたら、撮りたくなくなるわけですね。なぜかというと、最終的にフルパートとして編集する時に、どうしても良い作品にならないからです。
私の感覚では3回同じトリックが出てくると、見てる側はもうお腹いっぱいではないでしょうか。
ちなみに言うまでもありませんがアンドリュー・レイノルズのフロントフリップやブライアン・ハーマンのハードフリップなど、彼らのように規格外スポットでの得意トリックであれば私が良く言う「例外の存在」ということになりますので、あしからず。
話が少し逸れましたが、つまり全くなんのこだわりもないようなフィルマーであった場合、最終的な編集ビジョンを持っていないので、適当な構成で世にフルパートがでることとなり、結果的に「あれ?この人もっと上手かったような・・・」となるわけですね。
優秀なフィルマーは常にフルパートの完成ビジョンを持って、スケーターと行動しているものです。しかし、たまにその意見がライダーとぶつかったりもするんですけどね(笑)
ライダーもフィルマーもお互い本気だからこそ、ぶつかることもあるのです。
気迫がない
以前記事にしたことがありますが、フルパートにはスキルと同じくらい必要なものがあります。
それは「気迫」です。
わずか5秒の映像を納める為に、セキュリティーの甘い朝の6時に、100キロ離れたスポットに行き、トライする。それを×100日(笑)
良いフルパートを作る為にはそんな気の遠くなるような作業が必要です。
どんなに上手くても、このような「良いフルパートを必ず完成させる」という気迫と行動力がないと、結果的に妥協したフルパートとなり、上手い分ハードルが上がっていたそのフルパートは見ている側からすれば物足りないものとなってしまうのです。
まとめ
世界中のスケーターのフルパートが手元のスマホですぐに見られるようになってからもう随分と経ちました。
その中で、フルパートというものも「何度も同じトリックを入れてはいけない」「他の人がやっているトリックをやってはいけない」「前作を超えなくてはいけない」等、世界共通のルールというものの確立がより顕著になってきました。
ルールがないスケボーにも関わらず、勝手に厳しいマイルールを課すのがドМなスケーターというものですからね(笑)
そんな影響でしょうか、最近のスケーターのフルパートというものは本当に洗練されているなぁと感じます。 今後は「あれ?この人もっと上手くなかったっけ?」ということも、徐々になくなってくるのではないでしょうか。
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