スケーターというのはとても不思議な人種で、ルールのないスケートボードなのに「勝手に厳しいルールを自分に課す」というクセがあります。
当情報館でもいくつか紹介してきましたが、「フルパートにはパークの映像は入れない」や「フロントフリップは横回転」「グラブトリックの衰退」と、どんどん厳しいルールを作ってきました。
映像においてトリックや世界的な流れ等、無限に洗練され続けてきたスケボーですが、ノープッシュがイケてると言う概念もまた、その洗練され続けてきた結果「スケーターによる勝手なルール」と言えます。
ノープッシュってどういうこと?
ここでいうノープッシュとは、トリックのつなぎの時にするプッシュのことを指します。
例えばラインの映像。
フラットでトレフリップをやってからそのままステアでキックフリップをやるラインの場合、「トレフリップの後にプッシュをはさまず、そのままキックフリップまでいってしまう」という具合です。
プロのノープッシュ映像を見ると簡単にやっているように見えますが、これってやってみるとかなり難しいです。
まずトリックをすることによって当然スピードが落ちます。その落ちたスピードのまま、つまり自分が「一番やりやすいスピードではないスピード」で次のトリックをやるわけです。
ただでさえメイク率が低いトリックであればあるほど、自分の感覚(スピード)で入れないのであればメイク率がさらに落ちるのは必然です。
しかし、このわざわざやる必要のない難しさを簡単にやってのけていることにカッコ良さを感じる人種こそ、スケーターです。
最近では日本人スケーターの中でもノープッシュと言う概念はとてもスタンダードになりつつありますね。
どうして流行ったか
そもそもノープッシュが、カッコイイ!イケてる!となったのは2007年に発売されたLAKAIのフルレングス「Fully Flared」からです。
その作品で圧倒的なパートを披露したマイク・モーのパートのスタートライントリックがノープッシュであり、「ノープッシュやべぇ」というイメージがとても強かったのを記憶しています。
当時この作品を見たことがないというスケーターは存在しない、と言っても良いくらいこの作品は業界を圧巻しました。
その作品のトップバッターであるマイク・モーのスタートライントリックであったこと、そのノープッシュトリックが2つ構成ではなく、なんと3つ構成であったことがその後の流行りを形成したと考えられます。
内容は
ノーリーフリップ→トレフリップ→フロントサイドビッグスピン(ステア)
でした。
まず最後のトリックがステアなのでただでさえスピードを落とさないことが重要となります。にも関わらず一番最初のトリックがスピードの落ちやすいノーリートリックだったことも驚きでした。
とにもかくにも、様々なスタイルはあれどこのラインは世界中のスケーターが「カッコイイ!!」となったことは間違いないでしょう。
そして徐々に世界中でラインはできるだけノープッシュでトリック構成したほうがイケてるのでは?という流れになっていきます。
なぜカッコイイのか
どうして世界中のスケーターにカッコよく映ったのかですが、もちろん感覚的な問題になってしまいますが、早い話が「難しいことをあえてやってさらには簡単にこなしてなんかカッコイイ!」ということです。
スケーターの感覚はもう完全に子供ですね(笑)
ルールのないスケボーにあえて困難なマイルールを勝手に自分に課し、それを乗り越えた映像に感銘を受けるわけです。これはノープッシュに限ったことではありませんよね。
メイクさえすればなんでも良い、というのであれば、世界中の映像はすべてキックアウトがなく路面がきれいなパークで撮れば良い、ということになってしまいますから。
まとめ
スケボーというものはメイクがすべてではありません。「カッコイイ!」 がすべてです。
もちろんスケボーをスポーツと捉えている最近のスケーターにとってはカッコ良さよりもメイクがすべてなのかもしれません。特に日本のコンテストでは、とりあえずメイクさえすれば勝てるでしょうから。
ここがスポーツとしてのスケボーと、カルチャーとしてのスケボーの境目なのかもしれませんね。
最後にそのノープッシュを流行らせたmike moのパートをどうぞ↓
注目すべきは6:17のラインです
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